誰もが憧れる素材 シルク(絹)について | 繊維の種類を知ろう | 東京都クリーニング生活衛生同業組合

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誰もが憧れる素材 シルク(絹)について

あまり素材や生地について詳しくない方も、「シルク」という生地はご存知だと思います。
希少、高級品、エレガント...誰しもが持つであろうそのイメージは、どれも"憧れ"の代名詞と言っても過言ではありません。
そして、その存在は素材や生地の枠を超えて、化粧品の着け心地や、食べ物などのきめの細かさにも例えられるほどです。
では、なぜシルクはこれ程の憧れを抱かれる存在なのでしょうか。
このページでは、魅力いっぱいのシルク(絹)についてひも解いていきます。

シルク(絹)はどうやって作られるのか

絹は蚕蛾(カイコガ)という蛾の幼虫がつくる繭(繊維)から得られ、直径2~3㎝の繭からは約1,500mもの長い糸を作ることができます。
(※蚕蛾にとって繭は、護身のための小さな部屋のようなものです。通常は羽化するまでの間、外敵から身を守るため繭玉の中で過ごします。自分の部屋を自分で作るとは...健気ですね)

silk_1.jpg繭から引き出した繊維(生糸)の断面は三角で、中心は絹の主体となるフィブロイン、外側をセリシンというタンパク質が覆っています。
繭糸や生糸に石鹸やアルカリを用いると、繊維の外側を覆うタンパク質のセリシンを取り除くことができ、セリシンが除去された繊維は練糸と呼ばれます。
練糸の太さは約10μ(=0.01mm)ですが、実はこれは数百本のフィブリル繊維が集まってできたものなので、1本の繊維は1μ、さらに0.1μという、とてつもない細さの繊維で構成されていることになります。

練糸にする工程でセリシンをどれだけ除去するかによって、仕上がりの風合いが大きく変わります。
セリシンには私たち人間にとっての有効成分(後に説明します)が多く含まれています。
一方、固く張りがあること、染色などの加工がしにくいという特徴もあります。
つまり、セリシンを残しすぎるとシルク特有のやわらかな風合いが出ず、除去しすぎると有効成分が失われてしまうのです。
製品になった時の風合いや手触りを残しつつ有効成分も減らしすぎないように、セリシンは微妙な調整の上、除去されているのです。


セリシンの効能

練糸にする工程で除去されたセリシンは、排水として捨てられていました。
それは、先述の通り固く張りがあり加工がしにくいセリシンを除去することが目的だったからです。
しかし、この作業をする職人さんの手がキレイなことに目をつけ詳しく検査をしたところ、すでに知られていた「人の皮膚と同じタンパク質でできている」ことに加え「人間の皮膚に近い成分であること」、「化学繊維特有の弊害がないこと」など、良い効能がたくさん含まれていたことがわかってきました。
その効能を生かすため、有効成分を粉末(シルクパウダー)にして食品に加工したり、吸湿性・放湿性・保湿性等の機能を生かして下着や寝間着等に利用されたりするようになりました。


シルク特有の光沢の理由

シルクは古代から貴重で高級品でした。その理由は、繭玉を蚕蛾が作り出してからシルクになるまでの過程の多さ故の貴重さに加え、"高雅な風合いと光沢"にもあると言えます。
シルクの光沢はフィブロインのプリズム状(光を屈曲・分散・全反射させる状態)の三角断面に由来します。光をそのまま反射するのはごく一部で、透過する光、屈折する光、内部で二次反射する光などがマイクロフィブリルの中で繰り返されるため、独特で深みのある光沢になるのです。


シルク(絹)の特徴を知ろう

長所

・優雅な光沢がある。
・しなやかで、豊かなドレープ性(衣服が身体に優美にまとわり、ゆったりとした襞が入る性質)がある。
・吸湿性・放湿性に優れ、保湿性があるため肌触りが良い。
・絹鳴り(繊維がきしみ合う音で絹固有の現象)がある。

短所

・摩擦に弱い。
・フィブリルが集束して繊維を構成しているため、強い摩擦で繊維が割れて毛羽立ちやすい。
・毛羽だった部分は光の乱反射で白っぽく見える。
・紫外線に弱く、黄色~褐色に変色する。
・水洗いすると光沢が消失し、収縮したり色物は色落ちしたりすることがあるため洗濯が難しい。
・水に濡れると繊維が膨張し、乾燥しても元の状態にもどらないため、シミの跡が残る。
・虫害がある。

取扱い上の注意

絹は獣毛製品と同様に"風合いや光沢を楽しむ嗜好品的要素"があるため、着用や着用後のメンテナンス・クリーニングには、特別の注意が必要です。
具体的には...
・過度な着用や運動を避ける
・カバン、バッグ、リュックなどで擦らない
・連続着用を避ける
・保管の際は防虫剤が必須(虫害を受けやすい)
・光沢や風合いを損ねるため強いクリーニングができない

つまり気軽に洗濯やクリーニングが出来ないため、そもそも「シミをつけない・汚さない」ように着用する必要があるのです。

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