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以前、本ホームページ内のコラムで「「人間」と「衣服」の共通点としての『健康管理』について」と題して、生活習慣病を例に解説しました。
衣服の生活習慣病を防ぐためのポイントは、具体定に「①衣服の買い方」「②着用方法」「③洗濯をする前の準備」「④洗濯洗剤について」「⑤洗濯物の干し方」「⑥日常の保管方法」「⑦クリーニングの出し方」「⑧長期の保管方法」の8つに分けて考えることができます。
今回は「①衣服の買い方」を深掘りし、衣服の寿命を短くしてしまう具体的な着用例を紹介していきます。

衣服の生活習慣病にならないために気を付けること

衣服の生活習慣病にならないために気を付けるポイントには、大きく以下の8つが挙げられます。


①購入する衣服の選び方
②着用、日常のお手入れのしかた
③洗濯をする前の準備
④洗濯洗剤について
⑤洗濯物の干し方
⑥日常の保管方法
⑦クリーニングの出し方
⑧長期の保管方法

見ていただくと、衣服の生活習慣病にならないための注意点は衣服を選んで購入する時から始まっているということに加え、私たちが無意識に生活している普段の行動の中にもポイントが潜んでいるようだ...ということがわかります。
今回は「失敗しない服選びのポイント」と題して、①の「購入する衣服の選び方」を深堀していきます。
※今後「②着用、日常のお手入れのしかた」以降についても深堀してコラムを掲載する予定です。

衣服を購入する際に気を付けること

衣服を購入する際、色やデザイン、伸縮性などを見て購入する方がほとんどだと思いますが、ここではそれ以外に知っておきたいポイントや気を付けたいポイントを挙げていきます。
着用時の習慣やメンテナンス(自宅での洗濯やクリーニング)を意識しながらの購入が大切です。
衣類にも、消費期限があります

大切な衣類はずっと長く楽しみたいですよね。
もちろん、しかるべきタイミングで、素材に合った正しいケアを行うことでその寿命を保つことは可能です。しかし、どうしても劣化を防ぐことができない素材があることも確かです。
それが「ポリウレタン」という素材です。
ポリウレタンについては、こちらで詳細を載せていますが、寿命はおおよそ製造から3年と言われています。
劣化までの期間は、当然着用せずに保管していた期間や売れ残っていた期間も含まれるため、例えば「購入して初めて着用する日に劣化が顕在化した」なんてことになる可能性も否定できないのです。
最近は「この衣服は約3年で劣化します」という付記と共に製造年が記載された衣服も登場しています。メーカーの免責事項の記載ではありますが、この表示は消費者にとっても大変親切な表示であると言えます。
なお、ここでは劣化がわかりやすいポリウレタンを例に挙げましたが、顕在化までの期間や劣化の症状が違うだけで、製造から劣化が始まるのはどの素材にも言えることです。
短期間しか着用しないコートやアウターなどは特に、3年くらいは当たり前に着用します。次のシーズンに気持ちよく着用するためにも「その衣服がいつ製造されたものなのか」を知った上で購入することが重要です。
アウトレットやオークション・フリマアプリなどで購入する時は、一見新品の様に見えても実は劣化が進んでいるという可能性があります。
「購入者にとっての1年目が、その衣服の1年目とは限らない」ということを意識しより一層の確認が必要です。

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洗濯絵表示は情報の宝庫

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衣服を購入する時に、洗濯絵表示を見ている方はどれほどいらっしゃるでしょうか。
さらに、その洗濯絵表示には多くの場合「付記用語」が付いていますが、その付記用語まで読み、確認した上で購入している方は...どうでしょうか。
洗濯絵表示は、取り付けることが法律で決められている品質表示です。自宅での洗濯の可否や洗濯の方法が記号で表示されていることはよく知られていると思いますが、実は「付記用語」には、記号では表しきれなかった洗濯についての注意点や禁止事項などが記載されています。例えば記号で「水洗い可」とされていても、付記用語に「必ずネットに入れて、裏返して、単体で洗って」などと書かれていた場合、付記用語を確認せずにそのまま洗濯するのは、衣服にとって大変危険です。
付記用語を含む洗濯絵表示は、基本的には着用した衣服の左側に取り付けられていますが、リバーシブルの衣服の場合や着用時に目立たなくする目的で、ポケットの中などの目立ちにくい部分に取り付けられていたり、直接衣服に印刷されていることもあります。購入時に洗濯絵表示が見当たらない場合は販売員に確認しましょう。
万が一洗濯絵表示が付いていない商品があった場合は、購入しない方が安心です。
クリーニング店は洗濯絵表示を確認してクリーニング処理をしています。洗濯絵表示がついていない品物はクリーニング店に受け付けてもらえない場合がありますし、クリーニング事故につながる可能性も大きくなります。


なお、中にはご自分で洗濯絵表示を切り取ってしまう方もいらっしゃるようです。
ご自分で洗濯をする分には問題ないかもしれませんが、先述の通りクリーニング店に依頼する場合には必ず必要になるものです。
万が一切り取ってしまう場合でも破棄はせずに、切り取った洗濯絵表示をクリーニング店に提示するようにしてください。


洗濯を想定していない衣類がある...?
こんな都市伝説を聞いたことがありませんか?
「ハイブランドの衣服を洗濯しようとしたら、洗濯絵表示が付いていなかった(または、付いていたが、全ての記号が✕で洗濯の方法がなかった)のでメーカーに問合せたところ"この衣服は洗濯して複数回着用することを想定していません"と言われてしまった...。」
いわゆる使い捨てと一緒で「一度着用したらすぐ買い替えるため、洗濯は不要」という考えです。この都市伝説の真偽はわかりませんが、事実、使い捨てではないのに「全ての記号が✕で洗濯の方法がない」という衣服は存在します。こういった場合メーカーなどが推奨する、洗濯以外の特別な方法でメンテナンスをすることになりますが、メンテナンス代は着用する限り購入者が負担するものです。購入する時は衣服の代金だけを意識しがちですが、購入後のメンテナンスが可能なのか、その金額はどれくらいになるのかなどを含めて検討しましょう。

汗をかきやすいシーズンに着用するなら水洗い出来る衣服を

「汗汚れ」は水で洗うのが効果的です。高温多湿な日本では、汗をかきやすい環境な為、梅雨や夏のシーズンなどではどうしても汗をかいてしまうケースが多いです。
ところが、メーカーやブランドによっては、夏物にも関わらず水洗いすることを想定していないでドライクリーニングのみを指定する商品を販売する場合もあります。
このような商品は、ドライクリーニングだけではどうしても汗汚れは落とし難い為、しっかりと汗汚れを落とし切ることが難しいです。
衣服を購入する際には、特に夏物であれば「水洗いできる衣服なのか?」を必ずチェックしておくのが良いでしょう。

異なる素材が組み合わされた衣服
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本ホームページ内の別のコラムでも紹介していますが、衣服は素材によって、取扱いの注意点や洗濯の方法が異なります。
しかし"襟がファー、胴体部分は綿"など、1つの衣服に複数の素材が組み合わされている場合があるのです。
先に解説したように衣服に取り付けられた洗濯絵表示を見れば、自宅での洗濯の可否とその方法などは記載されているはずですが、問題はそれぞれの繊維で別の洗い方が示されているにもかかわらず、素材ごとのパーツで切り離しができない(丸洗いが不可能な)ものもあるということです。
例えば(A)の素材は水洗い不可、(B)は水洗いのみ可と表示されているのに、肝心の(A)と(B)が切り離せない...。こういった場合は、どちらの洗い方に合わせて洗濯したらよいのでしょうか。というか、洗濯してもいいのでしょうか...。
(A)と(B)共通で「クリーニング可」の記号があればクリーニング店に依頼することができますが、それもない場合はクリーニング店でも受け付けてもらえない可能性があります。
異素材が組み合わされた衣服の場合は、素材ごとに洗濯絵表示が異ならないか、異なる場合は素材ごとのパーツで切り離しが可能かを確認しましょう。
もし、素材ごとに洗濯絵表示が異なるのに素材ごとのパーツで切り離しが不可能な場合は、メンテナンス方法をメーカーや販売員に確認してから購入しましょう。

衣服や繊維の用途を考える
日本料理で丁寧な調理をする料理人も、中華料理で大鍋をふる料理人も、フランス料理で繊細な料理を作る料理人も、厨房に立つ人が共通して着用しているコックコートはそのほとんどが綿で作られています。コックコートのデザインや機能はそのお店によって異なりますが、素材が共通しているのはなぜでしょうか。
それは、綿は燃えにくく、例え燃えたとしても燃え広がりにくいという性質を持っていて、厨房での仕事着に適しているからです。
一方、汗を流してボールを追いかけるサッカー選手が着ているユニフォームは、ポリエステルなどの合成繊維で作られています。それは、ポリエステルは強度が高く耐久性があり、濡れても乾きやすいというスポーツに最適な性質を持っているからです。しかし、ポリエステルなどの合成繊維は"燃えやすい"という特徴も持っています。
このように考えていくと、ポリエステルなどの合成繊維は火を扱う厨房には不向きな素材ということがわかり、自宅でも合成繊維を着用しての調理は避けた方がいいということがわかってきます。
最近はキャンプが人気ですが、キャンプに行く時にも「どのような特徴を持った繊維で作られているのか」を意識して衣服を決めると、より楽しめるはずです。
衣服はその素材の特性に合わせた賢い使い方をすることで、より快適に過ごすことができます。
衣服を購入する時は、繊維のメリットとデメリットを考え用途に合わせて購入することが大切です。
憧れの海外ブランド!!でも...
これまで海外ブランドの衣服は、その金額だけでなく手段の少なさから、なかなか手に入れることができないものでした。
しかしインターネットが普及した昨今は、通販サイトやフリマアプリなどで気軽に入手できるようになりました。ただ、その反面、海外ブランドの衣服のメンテナンスの難しさに戸惑う方も多いようです。
それは日本直営店や正規代理店以外から購入した衣服の場合、トラブルが起きたとしてもメーカーの日本法人は対応しない場合があるからです。
ここでは海外ブランドを例に挙げましたが、国内ブランドでも同じスタンスを取っているメーカーは少なくありません。
通販サイトやフリマアプリを含め直営店や正規代理店以外から衣服を購入する場合は、トラブルになった時のリスクも知った上で購入を検討しましょう。


またよくある海外ブランドの商品トラブルで、濃色・発色の良いものは色落ちしやすいという事例があります。これはデリケートな生地に濃色・発色の良い染料を乗せていることが原だと考えられますが、自分で解決しようとすると更に症状が悪化する可能性があります。このような場合は海外ブランド商品の取扱いに慣れていたり、海外ブランド商品のシミ抜き経験や研究を重ねているクリーニング店に依頼することが大切です。

衣服を購入する際のポイントまとめ
     
  • 劣化は製造時から始まり、着用しない期間も劣化は進む
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  • 付記用語も確認を!
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  • 洗濯絵表示を見て、ケアを含めて購入を考えよう
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  • 異素材が組み合わされた衣服は要注意
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  • 使用用途に合わせ、最も活躍できる素材を選ぶ
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  • 入手場所や入手方法によっては、メーカーは対応しない


試着室では何を試すのか

衣服の購入を検討する場合、ほとんどの衣料品店で試着が可能です。暑いから、面倒くさいから...と言って試着をせず購入する方もいますが、衣服の購入の際はできる限り試着をすることをお勧めします。
それは、メーカー、着用季節、シルエットなどによってサイズの幅が異なるからです。
ここでは、試着した時にチェックするポイントを挙げてみましょう。

試着→着られた→購入!は危ない
試着してボタンが留まった、ファスナーが上がったから購入するという方もいらっしゃるかもしれませんが、果たしてそれで「ジャストサイズ」と判断して良いのでしょうか。
試着の時点で縫い目がよれていたり引っ張られていたりしたら、例え苦しく感じてなくてもその衣服は今のご自身には合っていません。
サイズの合わない衣服を着用することは見た目が悪いだけではなく、衣服の製造時に想定されていない箇所に力が加わり、衣服の寿命を短くしてしまうことにもつながります。
また衣服は洗濯やクリーニングによる若干の縮みは避けられない(※後に解説します)ため、若干の余裕を持って衣服を選ぶことが大切です。
トップス(シャツやジャケットなど)を試着する時
・両手で大きくバンザイ
トップスを試着した場合、正面と背面からのシルエットを確認して終わり...という方も多いかもしれませんが、トップスを試着する時のポイントはバンザイするということです。衣服は肩から逆三角形の形で作られているものもあるので、バンザイをして手を戻した時に衣服が元の位置に戻らなければサイズが合っているとは言えません。


・かがむ
お辞儀をするようにかがんでみて、第三者から胸元がどのように見えるのかを確認することも有効です。首回りのデザインによっては胸元から下着が見えてしまうこともあり、想定していない見え方になってしまう場合があります。

ボトムス(パンツやスカートなど)を試着する時
・スクワット
これは実践している方も多いかもしれませんが、サイズ感やストレッチ具合を確認するだけではなく、腰回りから下着が見えてしまわないかを確認することも大切なポイントです。
普段生活している時の自分の後ろ姿は、自分で直接見ることはできません。試着室の中では確認しにくい部分でもありますが、必ず確認するようにしましょう。


・ウエストに手を入れてみる
試着する時にデザインやサイズばかり気になって、つい忘れてしまいがちなのは、他の衣服との相性です。
試着室では普通にはけたものでも、他の衣服と合わせてインナーやトップスをタックインした時にきつく感じてしまうこともあります。そんなことにならないための指標は、試着の段階でウエストに手のひらが入るくらいの余裕を持たせることです。
ファスナーを上げる時にお腹をへこませてしまう方もいますが、余裕を持たせたサイズを選択すればお腹をへこませる必要もなくなります。
また、衣服は洗濯やクリーニングで若干縮むこともあります(※後に解説します)ので、試着の時点では少し余裕を持って購入することが大切です。

・ポケット
両サイドにポケットがあるズボンやスカートの場合、普通に立った状態でポケットがぱっくりと開いてしまっていたら、それもサイズが合っていない印です。
ポケットが開いてしまうのは、前後(腹部と臀部)から想定以上に引っ張られているからです。メーカーが想定しているシルエットで着用するためにも、ポケットが不自然に開いていないかを確認するようにしましょう。

・裾に注意
デニムやチノパンなどの裾が長いと歩く時に地面とこすれてしまい、最終的には破れてしまいます。また、マキシスカートやロングコートは、自転車のタイヤや階段で地面にこすれて裾が汚れてしまいます。
試着室では靴を脱いで試着をしますし、足の長さは左右でバランスが違う方もいます。
裾は靴を着用した上で長さを決め、キレイに着用できる長さで調整しましょう。


試着の時に気を付けることのまとめ

試着室ではサイズや丈を確認するだけでなく、例えば、物を拾う仕草をしてみる、電車の荷台を想定して頭上に手を伸ばしてみる、体をひねってみる...など可能な限り様々な姿勢をとってみましょう。実際の着用は、試着室の中よりも大きな動きをすることになることを考えれば、試着の大切さがわかります。
そしてここで重要なもう1つのポイントは、通販サイトやフリマアプリでの購入は、試着ができないということです。
同じ身長・体重でも着心地や着用のシルエットは人それぞれ異なるため、モデルや出品者の着用イメージは参考程度に考える必要があります。
せっかく出会えたお気に入りの衣服でも、結局着用しなくなっては意味がありません。
衣服を少しでも長く楽しむために、試着の段階からポイントをおさえるようにしましょう。

余裕がある衣服を購入した方がいいワケ

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試着の項目で「衣服を購入する際は、余裕をもってサイズを選択することが大切」ということを解説しました。それには「寸法変化率」も関係しているのですが、皆さんは寸法変化率をご存知でしょうか。寸法変化率とは、洗濯やアイロン、クリーニング処理などによって生地の寸法が変化する割合のことです。
織・編物などの生地の構造の違いや、素材の長さ・太さ・撚り方・混紡率などによっても異なるため一概には言えませんが、一般的に衣服は洗濯やクリーニングでの若干の伸縮は避けられないとされ、その目安が寸法変化率で示されています。
どんなにスポーツやトレーニングで鍛えている方でも、人間の体形は時間と共に変化します。その変更の大小は人によりますが、人と同じように時間と共に衣服もサイズが変わる可能性があるということです。


ちなみに脂肪が1㎏増えると、ウエストが1㎝大きくなるという研究結果もあります。
衣服はシルエットによって人に与える印象が大きく変わります。
購入したての素敵なシルエットや着心地を少しでも長く楽しむためには、衣服の正しいメンテナンスと共に、体形の正しいメンテナンスも大切です。